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地球畑通信　2020年春号

■トピックス
・農家インタビュー「二人三脚55年ふたり農業」
・消費者の視点「身近な生活に忍び寄る香害とは」
・ヨーロッパオーガニック通信
　「オーガニック留学から帰って感じる、日本と海外の違い」
・おうち時間おすすめ商品
　「地球畑カフェ特製オードブル＆メゾンエルーの自然派シードル」

二人三脚55年ふたり農業
地球畑通信

インタビュー生産者：阿久根孝さん、瀞香さん（鹿児島県伊佐市）

運命的な出会い
鹿児島県の北部にある滝名所、「曽木の滝」にほど近い、伊佐市大口ののどかな土地で、夫婦仲良く有機農業を営む阿久根さんご夫婦。
ご主人の孝さんは御年８２歳、農家の長男として生まれ、まだ誰もが高校へと行けなかった時代、伊佐農林高校で農業を学んだ後、家業を継ぎ今日まで農業一筋。地球畑の生産者の中では言わずと知れた大ベテランです。

奥様の瀞香さんは福井県武生市（現・越前市）生まれ、農業とは無縁の環境で育ち、一般企業に就職しました。
そんなお二人は孝さんが雑誌に掲載されたことが縁で出会い、結婚。
二人三脚の結婚生活が始まりました。

苦労した新婚時代
当時作っていたのは澱粉用のさつまいも、陸稲、そして地域のほとんどの農家では養蚕を営んでおり、５反ほどの桑畑を持っていました。大口に嫁ぐまで鎌すら見たことのなかった瀞香さんは、慣れない鎌で手を切ったり、蚕の虫に負けたりと苦労が絶えない日々。おまけに方言も難しく大変な思いもしましたが、孝さんを子どもの頃から親代わりに見守ってきた祖父母から「おはんな、よう頑張るな」と声を掛けられ、励まされました。

有機農業との出会い
有機農業との出会いは地域で有機農業に取り組んでいた仲間たちから、かごしま有機生産組合に誘われたことがきっかけでした。平成２年、今からちょうど３０年前のことです。その当時からかぼちゃ、ごぼう、里芋を作っており、農薬を使わなくてもできる作物だったことや周りで農薬の害で命を落とす人もいて、その危機感もあり自然な流れでたどり着きました。

心掛けていること
「有機農業で野菜を作るようになってから、農業がさらに楽しくなりました。毎日畑に行くのが楽しみで、自然に体が動いています。雨が続く日は畑の様子が気になってしょうがありません」。トラクターや堀り機など機械への投資も積極的に行う一方、草むしりは全部手作業。「手入れが大事」と瀞香さんは言います。「有機野菜が消費者の元に届くまでには値段も高くなる。だから少しでもいいものを入れなくてはとひとつひとつ注意をして箱詰めしています」。

若い世代につなぐ
阿久根さんご夫婦は組合の大口農場で働くスタッフや地域の若手就農者の良き理解者であり、お父さんお母さんのような存在。これまで多くの若者が育ち、巣立っていきました。人手が必要な時は農場スタッフも手伝い、共に汗を流しています。今年の里芋は出来もよく、組合の生産者に種芋として分けることになっています。夫婦二人三脚で築き上げた農業は次の世代へと確かに受け継がれています。
（聞き手　地球畑企画課　渡瀬）

もう随分昔の話ですが、地球畑のギフトカタログ「夏の自然の贈り物」を作り始めた頃、表紙の写真はいつも阿久根さんの大玉スイカでした。それは夏の朝の匂い。地球畑の夏の風物詩。
トラックの荷台に大きなスイカをいっぱい乗せて、大きなしゃがれ声で、今年のスイカの出来を語る声が響きわたります。その声を聞くと、あぁ今年も夏がやってきた、という幸せな気持ちになるのでした。
阿久根さんといえば、百何十人もいる組合の中でも筆頭の技術と生産力のある農家。その阿久根さんが昨年、農作業中の事故で、一ヶ月の入院を余儀なくされ、肺年齢は９５歳になってしまったのだという。
同志で相棒の瀞香さんが「私は元気なんだけど、この人は朝起きたときから、あと何年できるかな？と、そればっかり」と笑う。するとすかさず、「体力が続く限り」「５年はできる」と真面目な顔で答える阿久根さん。

家の側には立派な大型の里芋の掘り取り機が置いてあり、これでどれだけ里芋を出荷出来たかをとても楽しそうに語る孝さんのお話を聞きながら、機械を買う時、反対したり意見がぶつかることはないの？と、瀞香さんに聞いたら、むしろ「私の方が勧めたりするくらい」なのだそう。
これまで働き詰めに働いて、決して楽になったとは言えない暮らしの中、未だ機械への投資は惜しまないお二人に、最後まで農業人生を生き切ろうとする決意のほどを見せられた思いでした。

瀞香さんの孝さん評は、「おじいさんおばあさんに大切にされて育ったせいか、争いごとを好まないし、人の悪口は言わない、人を押しのけてまで自分の得になることをもとめたりしない。本当に純朴というか、素朴な田舎の人」。
農場の若者たちが「お母ちゃんがなんというか」と気にするほど、頑張り屋ではっきりした性格の瀞香さんが、孝さんを前に言った言葉は単なる褒め言葉ではないけれど、夫への深い信頼であり最大の賛辞のようにも感じられました。
「私も農業の世界にはまったということね」と瀞香さん。
それは日々楽しげに、おおらかに自然と向き合う孝さんとともに生きる世界に「はまった」ということかな、と。

長年連れ添った相手を人格の本質的なところで評価し合えるのは幸せなことだと、瀞香さんの秘かな熱い思いに触れた一時でした。

格差が広がる世界に破壊的な影響を与えつつある新型コロナウイルス。共感力や想像力が失われつつある社会の貧しさが、より一層鮮明になり、グローバル資本主義の限界が浮き彫りになって行くだろうと思います。
自給率が30％を下回る日本社会。
世界が自国ファーストで経済統制を強化するとも限らない状況の中、協力や自粛の掛け声のみでこの危機を乗り越えることができるのでしょうか？

食料危機やコミュニティの崩壊に備えるためにも、有機農業がもとめる公平公正な社会、農家がもっと大切にされ、安心して食べ物を作り続けられる社会を、と切に願うこの頃です。
地球畑代表　大和田明江）

香害とは
地球畑は関西出身の妻が結婚前から通っていた縁で、１２年以上利用させて頂いています。今回地球畑通信に原稿を書かせて頂けることになり、今後、社会問題化する可能性があり化学物質過敏症（CS）の本丸とも言える『香害』に関して触りの部分をお伝えしたいと思います。
『香害』を紹介したいと思ったのは、他の家庭の洗濯物からの臭いが発端です。我が家では柔軟剤を使用していないため、洗濯する際の化学物質による強い臭いが衝撃的であり、気分が悪くなります。それに対し、他の家庭では気軽に使っているという現状に「揮発性化学物質の臭いに関して麻痺しているのでは？」と強く感じました。

増える香害被害
この出来事から柔軟剤及び建築建材にも使用されている“香料”全般について調べてみると、主成分は4000種類以上の化学物質が該当しており、その大部分が人工の揮発性化学物質としての物性を有しています。“香料”の大きな問題点は、人工の揮発性物質が数種類混合されていたとしても“香料”と表示をするだけで、詳細な成分名に関しては非公表で問題無いとされるところにあります。その反面、安全性に関しては香料業界の自主規制に任されています。　国民生活センターへの柔軟剤等の香料に対する頭痛及び吐き気の危害相談は2008年の３件から、2012年には41件まで急増。さらに現在も香害被害者は増え続けています。

洗濯用洗剤の危険な成分
市販の柔軟剤を含有する洗濯用洗剤の成分の中でも、合成界面活性剤、蛍光増白剤およびイソシアネートは健康への悪影響が大きいとされています。
各成分の特徴を紹介すると、
①【蛍光増白剤】
衣服を白く染め上げる効果のある蛍光増白剤の一部は発ガン性も指摘されるため、マスク及びオムツ、さらに生理用品等の直接、肌や口腔に触れる製品への使用が制限されている。
②【合成界面活性剤】
水と油等は混ぜ合わせてもすぐに分離してしまうが、合成界面活性剤を使用すると水と油が分離しにくくなり品質が安定する特徴がある。この成分は何重構造にもなっている皮膚バリアを破壊し、アトピー性皮膚炎等の皮膚トラブルの原因物質の一つと報告されている。
③【イソシアネート】
イソシアネートには、香料を徐々に放出して効果を長続きさせる作用がある。柔軟剤では微小なカプセルに包み込んだ香り成分を洗濯の際に繊維に付着させ、着用した人が動くたびに香りと共にイソシアネートが放出される仕組みになっている。イソシアネートを含有する香料の吸入により、過敏性肺臓炎及び咳喘息を引き起こす場合もある。

香料の構成成分の公開を
私が大学院時代にアミノ酸の構成を分析する時に使用していた蛍光測定用エドマン試薬と、イソシアネート及び蛍光増白剤とは密接に関連しており、洗濯用洗剤が含有している人工の揮発性物質が将来的に不妊症あるいは子供の発達障害にも影響すると考えるのが自然です。研究者も行政も関心を持つべき局面に突入しており、第一歩として企業が香料の構成成分の公開を積極的に行う必要があります。

世界から信頼される道は
この文章を書く準備をしていた頃に、新型コロナウィルスの世界的な流行が報道され始め、日本における患者へのPCR検査の遅延が国会でも議論されていました。
ちょうど100年以上前、大正時代の政治家で、後に関東大震災の帝都復興事業及び台湾総督として名を馳せた後藤新平が、最初に手掛けた大きな仕事が日清戦争からの帰還兵23万人の検疫作業でした。日本が世界の列強を驚かせた検疫事業であり、新型コロナウィルスを始めとする日本が直面する感染症等に誠実に対応する事が、世界からの信用を維持できる最良の方法だと教えてくれています。今後、中国を始めとする外国との流通速度が増して行く中で、『香害』を始めとして社会問題にも真摯に向うことの大切さを改めて思います。
食の問題も深刻になっていくこれからの時代、米・味噌・醤油など、食のベースとなるものは、せめて安心の素材、製法で作られた地球畑のものを買ってほしいと思い、周りにも勧めています。地球畑のようなお店をいつまでも守ってほしいと強く願っています。

（参考文献）香害‐そのニオイから身を守るには‐岡田幹治・著

去年の4月から大学を休学して、ヨーロッパで農業留学していました。
ド田舎の有機農家さんにて住み込みで働かせてもらい、現地のオーガニックを体当たりで学んだ１年間でした。
そんな濃厚な経験を終え、帰国して2ヶ月以上経ちます。今回は帰国してから考えることをお伝えできればと思います。

帰国してから、まずショックを受けたのは、日本のプラスチックの多さです！
現在ヨーロッパではレジ袋を渡されることは皆無です。
（請求すると、変な目で見られます。もちろん有料です。）
また、野菜も基本量り売りなので、包装される必要がありません。日本の消費者は、商品の見た目の良さを過剰なほどに求めますよね。そこのギャップを強く感じました。

また海外では、対人関係がフラットだなと思います。
いろんなサービス業において、お店の人とお客さんの立場が対等なことが多いです。レジの人は座ってるし、無愛想なことも多いし、次のお客さんが待ってても、世間話をします。
お客さんはお店に出入りする時は必ず挨拶するのが礼儀です。人間味があるとでも言いましょうか。
日本のサービスは丁寧ですが、帰国してからは少し寂しく感じることもあります。

ヨーロッパの野菜コーナー

人生において重要なことを、全身で体感しながら、吸収しまくった一年でした。
私が常識だと思っていたものは、社会の中で、私が勝手に信じ込まされていたものであることを痛感しました。
常識に縛られすぎないで、常に本質を見つめることが、いかに大事なことかを学びました。この一年で肉体的にも精神的にもさらにタフになれたと断言します。本当に良い経験でした。

大学生もあと1年です。その後の進路も色々と迷い中ですが、焦らずにやっていきたいです。
これからも農村の暮らしやオーガニックのことを、たくさんの人に発信していきます。
応援してくださった皆様ありがとうございました。

　

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地球畑通信　2019年冬号

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