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地球畑通信　2021年冬春号

■トピックス
・農家インタビュー「二人三脚柑橘づくり」
・地球畑収穫祭を開催しました！
・地球畑　世界の仲間たち
・地球畑カフェ　春の養生レシピ

二人三脚柑橘づくり

インタビュー生産者：堤田昭一さん　律子さん（鹿児島県出水市）

柑橘づくりのはじまり
私共２人は鹿児島県出水市で柑橘類のみを栽培している小規模の農家です。父親が病気になり、農業が続けられなくなったため、私が引継ぎました。
当時40歳でした。始めた当初、娘のアトピーや私の農薬負けもあり、食の大切さや化学農薬の恐ろしさを痛感しました。そこから農薬や化学肥料に依存しない農業を目指しました。

試行錯誤の日々
でも現実の自然環境は生やさしいものではありませんでした。
豊作に実った果実をカメムシに献上することになり、収入はもちろん皆無でした。
昆虫類の被害はどんな作物にもあります。一例を申しますと、９月の極早生みかんを吸汁するカメムシを手で捕獲する方法を一週間続けたこともあります。
今考えますと「何とバカなこと」をやったのでしょう。近隣の農家は1回の殺虫剤で事足るのです。
生計を営むためにしている農業なのに…。結局は「夢」に終ってしまい、頓挫しました。

それからは必要最低限の対策を実施することにしました。
でもやっぱり外観などはスーパーにあるものとは全然違っていました。お客様はスーパーにあるものが常識と思って買物されると思います。見た目も重要な要素です。
売れる柑橘類を栽培することが必須なのです。そのためにも様々な品種の柑橘を栽培していきたいと思っています。
それで少量多品種です。一年中供給できる体制こそ大事と考え、今日に至っております。

地球畑通信

続ける原動力
生産者としての喜びは何と言ってもお客様に喜んでいただけることに尽きます。
苦労が報われるひとときです。体力が続く限り、無理しないでできる範囲で生産活動を行い、お客様に喜んでいただけるものを供給したいです。

二人三脚の人生において、二人で飲む「お茶の時間」を大切にしています。
家から眺める風景。青空、海、木々の緑、庭の花々、静寂など自然を満喫しています。
忙しい時には気にも止めなかったことです。二人でこの場所にいることに感謝しています。
お近くをお通りの際はお立ち寄りください。歓迎です。

堤田さんとのお付き合いは、もうかれこれ30年近くになるのでしょうか。
脱サラでお父さんの果樹園を引き継ぎ、娘さんのアトピーから、農薬を使わずに何とかみかんが作れないか？と模索する中、知り合いにかごしま有機生産組合を紹介されたのだそうです。
その娘さんも、もう40歳。地球畑が始まって間もなくの頃でした。
組合の加入条件は無農薬、無化学肥料の農法を追求し守ること。ただし、永年作物である果樹栽培は、可能な限り農薬を使わない、となっています。
組合の発足から数年の間に果樹の無農薬栽培で木を枯らし、継続困難になりかねない状況があったため、現実的な約束事になったのでした。
そうした中、2000年に有機JAS法が成立。
認証を受けなければ有機という言葉は禁止、無農薬という言葉も「好ましくない」となり、果樹の生産者の皆さんもなんとか有機JASの認証を取ろうとしました。

試行錯誤で苦労を重ね、生活のための農業と思いつつ、食べられずに律子さんが働きに出たりしたという堤田さんたちも、有機JASの認証を受けようとしましたが、最終的に断念。
その時の思いからか、今回地球畑通信の原稿をお願いしたら、律子さんから「うちは有機ではないのでと言っています」との返事。
そして、「組合に少しでもお役に立てればと言う気持ちでいっぱいですので、説得したい」と連絡がありました。

少量多品目栽培の堤田さんの柑橘は、冬はグリーンオレンジ、はれひめ、津の望み、はやか、紅ばえ、不知火と続き、年が明けると、たまみ、はるみ、津の輝きで、美味しさも糖度もピークになります。
果樹園の仕事はほとんど昭一さんが1人で行い、律子さんはお手伝い程度。
なぜかというと、昭一さんは選果も収穫も自分なりのやり方を大事にする人で、とても丁寧。
どれをいつ収穫するかなど、段取りにもこだわりがあり、草刈り機も律子さん用の軽量のものを買ったが、少しでも木に当たると荒いと言って嫌がる。
「だから、主人にはしたいようにしてもらって、私は彼がやりやすいようにサポートをし、少しでも居心地の良い状態を作りたい」と。

ターシャ・テューダーに憧れ、庭作りに励む律子さんが大事に育てたお花たちに囲まれ、お茶の時間や2人で過ごす時間を大切に、遠くの海を眺めながら暮らす毎日。
ケンカをすることはないの？と聞いたら、意外なことを聞かれたという表情で、
「え～ないよ」と笑いながらきっぱり。
どちらかが、相手に合わせて我慢をするのではなく、相手を労りあっているうちに作られた関係がとても美しく幸せに見えました。

堤田さんたちを見ていると、以前オーガニック映画祭で上映された「人生フルーツ」という映画を思い出します。
ある意味エリート夫婦の自給自足の暮らしぶりに多くの人が感動したドキュメントでしたが、実は私は、自分以外の人のために自然と向き合い汗水たらして食べものをつくる農家の人たちにその賛辞の一部でも向けられたら、と何か割り切れない切ないような気持ちにもなりました。
日本の農業が持続可能であるために考えねばならないことは山ほどあるけれど、その恵まれない中で堤田さんたちのように豊かに生きる人もいることを、教えられる日々です。

「人生フルーツ」の基になった本は地球畑にも置いていますが、「夫婦仲良しの秘訣は、程よい隙間があることだと思う」とか「長い時間をためた1つのストーリー、暮らしていく上でのひとりひとりの知恵のようなものを次の世代に届けられれば、それが年寄りの仕事かな」とか、参考になる言葉もたくさんあります。

都市と農村の間に共通言語がなくなってしまったとさえ言われる時代。
堤田昭一さん、律子さんの生き方は、まさに「人生フルーツ」そのもののような気がします。

（地球畑代表　大和田明江）

今年のフォーラムは、長崎で県の農業改良普及員から、有機農業者になられた吉田俊道講師で、講演開始からユーモアを取り入れたエネルギッシュなトークに一気に引き込まれました。

私自身は、かごしま有機生産組合へ入社してから有機農業を知りました。
圃場を見せて頂いたり、体験したり、有機JASのことなど仕事を通して知識を得ることで何となく有機農業のことを少しずつ知るようになりました。
加工品は、味が足りないとき、グルタミン酸などのアミノ酸や砂糖などの糖類を追加して「旨味」の強さを表現しますが、有機野菜はそういった物をあまり加えなくてもおいしい加工品が作れることがわかりました。
講演のお話の中に、「有機農産物は抗酸化作用のあるファイトケミカルが非常に多い」とおっしゃっていました。
そのことが「旨味成分（アミノ酸）」とイコールではありませんが、「味の濃さ」につながるような気がします。
また「米を食べる民族は強い」と言われていましたが、本当にその通りだと思います。

私は先祖から田畑を引き継ぐ兼業農家の家庭で育ちました。子供の頃から「米を食べなさい」と言われて育ちました。
お米を主食にすると自然と和食中心のバランスのいい食事になります。
少し前から健康維持にと、朝食は米食中心に変えていて、実際パン食より体の調子はいいです。
子供も親のマネをするので、何かと一石二鳥です。
現代はストレスを抱え、時間のない日々を送る人が多い中、バランスよく食生活を送るのは難しいですが、
有機野菜のような本当に身体にいいものを少しずつ食生活に取り入れていくことで吉田講師の言う通り、
身体が変わっていくと思います。
私も加工品を通して便利で健康につながる食品作りを目指していきたいと思います。

（加工プロジェクト　山崎悦美）

春の陽気となった2月23日、指宿の前園さんの畑で地球畑収穫祭が開催されました。
総勢40名で初物の新玉ねぎを収穫しました。玉ねぎは簡単に引き抜けるので、我先にと競い合うように、軽快に次々と収穫していきました。
青空のもと、子どもたちの元気な声が響き渡りました。
今年の玉ねぎは今までで1、2番の出来だという前園さん。
有機農業を営み40年以上の前園さんでもなぜだか分からないと言いますが、ベテランの生産者ほど、よくそう言っている気がします。
蓄積された経験をもっても、自然界では何が起こるか分からない、自然への畏敬の念を感じました。
9月に種まきしてから収穫を迎えるまで、生育の具合を見て肥料を与えたり、小まめに除草をしたりと、手をかけ、目をかけ、ようやく立派な玉ねぎができました。
イベントで体験できるのはほんの収穫だけ。収穫後も天日で乾燥させ、根と葉を落とし、サイズごとに選別し、袋詰めして出荷、さらには畑の片づけまで、野菜が食卓に届くまでには目に見えないたくさんの努力と苦労があります。
収穫体験や生産者のお話を通して、これから野菜を買うとき、食べるとき、畑の様子や生産者のことを思い浮かべてくれたらな、そういうことを伝えられるお店でありたいと、思い、考えた1日でした。

（地球畑企画課　渡瀬景子）

ベトナム出身のBIEN THI HONG LE（ビエン・ティ・ホン・レー）と申します。
2019年に日本に来て、技能実習生になりました。かごしま有機生産組合に入って、今年で3年目です。

どんなお仕事をしていますか？
今は喜入農場で、深ねぎ、大根、かぶとゴボウを収穫しています。
収穫後、調整し、パック詰めして、出荷します。ときどき除草作業をしています。

ベトナムの農業について教えてください。
2008年、ベトナム農業農村開発省は、食品の安全性、製品の品質、生産者と消費者の健康、トレーサビリティを確保するためのVietGAP（Vietnamese Good Agricultural Practices）基準を発行しました。
現在、有機野菜に関するあらゆるレベルで、政府と人々の認識と行動が強化され、近代化、大規模、ハイテク農業への投資を呼び込んでいます。しかし、農薬の乱用は依然として続いています。だから私はまだまだ野菜が安全とは思いません。

この時期のおいしい野菜の食べ方を教えてください！
喜入農場で育てられた野菜はオーガニックなので、体の健康や化学物質を気にせず、安心して美味しくいただけます。ベトナム風に、かぶは酢の物に、人参はナンプラーで炒めて食べるのがおすすめです。

夢を教えてください！
私の夢は、帰国後、有機農場と牧場を組み合わせた農場を開設し、クリーンな有機野菜を提供して、消費者の食の安全と健康を確保することです。私の現在の目標は、夢を実現するために一所懸命に働くことです。

はまぐりごはん
【材料（2～3人前)】
蛤：15～20個
酒（酒蒸し用）：50cc
水（酒蒸し用）：50cc
米：2合
昆布だし：200cc
筍：100g
椎茸：5枚
生姜：1片
★酒：30cc
★みりん：15cc
★薄口しょうゆ：15cc
蛤煮汁（濾したもの）：30cc
三つ葉：適量
※蛤は殻を叩いた音が鈍いものや臭いのするものは避けてください。

【作り方】
①蛤は塩水（3％）で2～3時間置いて砂抜きする。フライパンに蛤を入れ、昆布（5cmカット）、酒蒸し用の酒、水を入れ、加熱する。沸騰したら蓋をして蛤が開くまで5分ほど蒸す。蛤が開いたらフライパンから取り出し、ぬれ布巾を被せて冷ます。冷めたら殻を外し、煮汁はキッチンペーパーで濾す。
②筍は短冊、椎茸は千切り、生姜は細い千切りにする。
③炊飯器に米、昆布だし、筍、椎茸、蛤煮汁（濾したもの）、生姜の千切り、　★の調味料を入れ、炊飯モードで炊く。
④炊き上がったら殻を外した蛤を混ぜ、器に盛り、天盛りに三つ葉（2cmカット）を散らし、完成。

※養生ポイント
鹹味（かんみ…塩辛い味）の蛤、苦味の筍で肝の働きを助け、解毒作用を促します。甘味の椎茸により胃の働きを助け、食欲を増進し、胃もたれを防ぎます。辛味の三つ葉により血流を改善し、食欲も増進します。

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地球畑通信　2020年秋号

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