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地球畑通信　2021年秋号

■トピックス
・農家インタビュー「豊かな人生は湧き水と共に」
・地球畑Originalができるまで
・地球畑カフェ　食欲の秋レシピ

虹色農園

インタビュー生産者：前原幸太郎さん・絹子さんご夫妻（宮崎県えびの市）

有機農業を始めたきっかけ
宮崎県西部の鹿児島、熊本両県境に接したえびの市の中山間部田代地区でお米主体の有機農業と農家民泊、予約制の農家レストランの虹色農園を営んでいます。えびの市は寒暖の差が大きく、冬の最低温度は毎年マイナス５～６℃、１番寒かった年はマイナス１２℃、雪は20～30cm積もった年もあります。

平成25年に地元の消防署を退職してから本格的に始め、現在田んぼは３町歩（約29,000㎡）です。夫婦でやっていますので、農業はほぼ私が担当し、料理好きの妻が農家レストランと農産物の発送などをしています。コロナ禍で今はできないのですが、農家民泊には毎年中学生がきてくれます。考えを押しつけることなく、体験して自分で感じてくれたらと思っています。

病気が食を考えるきっかけに
私たちが有機農業を始めたのは家族の病気（アトピー性皮膚炎）がきっかけでした。あちこちの病院をまわるうちに、食生活の改善を指導されました。
この時担当医から「娘さんの病気は大変だけれど、食の勉強をすることで人生が変わるから幸せですよ」と言われました。それを機に平成元年から米・野菜作りに農薬・化学肥料を使う慣行農法をやめました。
牛皮でできたバレーボールにも反応してしまうほどのアレルギーの娘が摂れるたんぱく質が、大豆と有精卵だけだったことから鶏を飼い始めました。
始めのうちは鶏の餌を農協から買っていましたが、防腐剤・酸化防止剤など添加物が多いことを知って、餌になる小麦なども全部自分で栽培することにしました。当時の栽培品目は80種類を超えていました。

ＥＭ農法へ
有機農業をやる上で有用微生物群（人間や環境にとってよい働きをしてくれる微生物のこと）であるＥＭを米作り、野菜づくり等に使っています。環境を守りながら除草が楽になった上に、作物の出来もいいのですが、このＥＭで元気になった土の畑は働いていて本当に気持ちがいいのです。きつい作業をしていても疲れを感じません。不思議な現象です。

日本一のお米を目指して
ＥＭ農法でできた虫食いのない野菜は隣町のオーガニックレストランで大変喜ばれています。お米の品質を上げるため、土壌診断を行い、土づくりに緑肥のレンゲ、マメ科のヘアリーベッチを作付けし、自家製のＥＭぼかし肥料などで育てています。
ただ昨年暮れの腰の骨折が完治しておらず、ひざ痛の再発に悩みながらですが「前原さんのお米を食べて元気になりました」「おいしくておかずが入りません」などといったお客様の声に元気づけられています。

食から環境へ
食を考えるうえで環境は切り離せず、有吉佐和子さんの「複合汚染」、レイチェルカーソンの「沈黙の春」などに影響を受け、水俣へ何度も足を運びました。
救急の仕事をしていた時にも出会うことのなかった水俣病の患者さんの症状に衝撃を受けました。近くは宮崎での土呂久の公害問題（ヒ素中毒）を調査されたのが娘の学校の先生という出会いもあり、食への関心は環境へと広がりました。

家族の病気をなんとかしたいと始めた有機農業は、本当に人生を変えてくれました。

なかなか有機農家が増えないことが不思議なほど、有機農業って超楽しいですよ。

地球畑通信

「陣の池」田代集落の根源となる湧き水。
水量は毎分約４トン。透明度が高く澄んでいる。

秋晴れの日。稲刈りが始まる前にと、えびの市の前原さんのお宅に伺った。
家々の前は幅２メートルはあるかと思われる水路で、清流が音を立てて流れています。
えびの市田代地区は村づくりで天皇杯をもらったというところ。一緒に行ったスタッフが「まさに新日本風土記ですね」というような美しい農村の風景が広がっていました。
若い人が多く、耕作放棄地がない地域の姿が端正な佇まいとなって伝わってきます。
前原さんはこの地で、学校出てすぐから定年まで消防署に務め、消防署長を最後に停年。その後は有機栽培の米作りに励んできました。
消防署の仕事はリスクを伴う反面、半分近い夜勤の時間を読書に使えるなど、自分の時間が作れる幸せな面もあったといいます。

お二人にとってとても大きかったのは、娘さんのアトピーが悪化し、「こんな体に生まれてきたくはなかった」と言われたときのこと。
どうにかして治してあげたいと思ったと、当時のショックを思い出すように色々語ってくれました。

前原さんに、アトピーの原因をどう考えていますか？とあらためて聞いたところ、一番は環境のせいでしょうか？食べ物、添加物、空気、水の汚染と様々な要因があるのでしょうが、と、とても冷静な答えが帰ってきました。
集落の真ん中に水田があり、それを囲むように家や水路がある田代地区は、昔は「ゆい」（農村社会で古くからある習慣で、地域の農作業を互いに助け合う互助活動）が非常に盛んだったそう。ゆいのみんなで農作業をしたり、水の管理をしてきたという子どものころの思い出話も興味深いものでした。
夏休みには子どもたちが川下りをしたという水路が、あまりに水量豊富で美しく、とうとうその水源まで案内していただきました。こんこんと湧き出る泉がある集落の豊かさは、黄金色の秋に一層輝いているようでした。
その後、腰を痛めている前原さんの稲刈りが気になってお電話したら無事終了とのこと。
「１袋30kgのお米は必ず絹子さんと2人で持つようにして…」と相変わらずの仲良し夫婦です。

世界も日本も有機農業に大きく舵を切り始めた時代の転換点。
学校給食の有機化はまずお米からです。地域に有機の田んぼをどれだけ広げられるか？組合・地球畑の米部会長である前原さんを中心に、チャレンジしていきたいと思います。みなさん、応援してください。
（地球畑代表　大和田明江）

地球畑Originalができるまで

地球畑の本部であるかごしま有機生産組合で、地球畑のオリジナル商品を生み出している加工事業部。
そのコンセプトやこれから目指すところを、加工事業部の内徳さんに教えてもらいました！

添加物を使わない、素材の持つ本来の味わいや個性を生かした商品づくり
うま味調味料を使わずにタマネギの旨味を、甘味料を使わずにサツマイモの甘みを、太陽光で引き出したゴボウの香りを、皮ごと食べられる柑橘の安全性を、そういった農家の想いを反映した加工食品を作っています。
有機認証を取得した農産物加工場は全国的にも少なく、規模も小さいので、価格は高くなりますが、手仕事でつくった地球畑originalは価値のある優れものだと、自信を持ってお勧めしています。

「日本中のこだわりの人参ジュースを飲んできたが、１番おいしいと思ったのが地球畑の人参ジュースです」
「日本中探したけど見つけられなったのに、国産有機100％のベビーフードをつくっているんですね」
とプロのバイヤーさんから驚かれる商品です。

希少な有機農産物を余すところなく食べてほしい
生産者の圃場を訪ね、一緒に出荷作業をしていると、「これは変形しているから出荷できない、これは大きすぎる」と選別されていく農産物を目にします。
それらはまた土に還り、次の農産物を育てる栄養になる訳ですが、つまりは捨てられているんです。暑いなか草取りして雨風に耐え手作業で収穫された農産物が、1％にも満たない国産有機農産物が、捨てられています。それらに新しい魅力をつけてお客様にお届けできるのがこの仕事のやりがいです。

加工チーム写真

地球畑originalをつくっているのは現役のママたちと力持ちの男性陣。
自分の子供に食べさせるのはどんなものが良いか。日々の製造の中で、「これで良いか？」自問しながら、より良い商品づくりに取り組んでいます。

私たちが目指す農産加工品
これからの数年で、日本におけるオーガニックのニーズは大きく変わっていきます。日本で最大の有機農家の生産者団体であるかごしま有機生産組合。その直営店である地球畑は今年で30周年を迎えます。
近代農業がもたらした公害問題に疑問を抱き、「自分の作った農産物がひとのからだをつくる生きる糧となるように」という理念をもって歩んできた生産者であり、お店です。日本のオーガニックの先駆者である自覚と誇りをもって、取り組んできた加工プロジェクトが、ようやく芽を出し始めたところです。

ベビー瓶写真

買い物は大切なものへの投票
近年、エシカル消費ということばを見聞きすることが増えています。「健康にいいから」というだけではなく、「豊かな自然環境を未来に残したい」といった倫理的で利他的な視点や視野を広げつつ消費をしようという考え方です。これからの食事に何を選ぶかは消費者の自由です。そのひとつにオーガニックがあってほしいと思います。

化学肥料・農薬、除草剤をつかわない有機農業は手間がかかる農業で、儲かりません。
それでも信念をもって日々汗を流す有機農家、「つくる人々」がいます。その想いを伝えお届けする「つなぐ人々」がいて「つなぐ場所」があります。そして、オーガニックな食と暮らしを求める「食べる人々」がいて初めて持続可能な循環が生まれるのだろうと思います。

買い物をすることは商品や作り手を応援することと同じです。地球畑originalも多くの人の手に取ってもらえうよう、より良い商品づくりに取り組んでいきます。

今年発売になった新商品の「たまねぎスパイス」
規格外の有機玉ねぎの有効活用を考えて生まれました。温野菜や肉、魚にかけたり、お湯を注いでスープに、オイルと合わせてドレッシングにもなる万能調味料です。

有機野菜でつくる秋のミネストローネ

【材料（4人前)】
黒豚ベーコン（短冊切り）：50g
玉ねぎ（角切り）：150g
人参（角切り）：100g
しめじ：50g
さつまいも（角切り）：100g
キャベツ（ザク切り）：100g
ズッキーニ（角切り）：150g
にんにく（スライス）：1片
ホールトマト：1缶
（イタリア産有機トマト使用）
水：800ml
ローリエ：1枚
天然塩：小さじ1/2
胡椒：少々
有機オリーブオイル：適量

【作り方】
①鍋にオリーブオイルをしき、にんにくを炒める。

②香りが出たら、ベーコン、玉ねぎ、人参、しめじを炒める。

③玉ねぎが半透明になったら、ホールトマト、塩、胡椒を入れ、約5分炒める。

④水とローリエを入れ、中火で10分煮込む。

⑤さつまいもを入れ、火が通ったら、キャベツ、ズッキー二を入れ、塩で整える。
⑥器に盛り完成～♪

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地球畑通信　2021年夏号

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