|
地球畑を代表するお野菜のひとつである人参。
その濃厚な味わいで、青果としてもジュースとしても毎年ご好評頂いているお野菜です。
南国の温暖な気候を利用して、県内各地で栽培されていますが、ここでは、有機栽培の人参がどのように作られているかを、南薩の頴娃町(えいちょう)の山脇さんを例に紹介させて頂きます。(2019年8月〜2020年1月)
(1)土作り
8月上旬〜下旬
畑に空気と水分と栄養分をいきわたらせる為、種をまく前の準備として何回もトラクターで耕運します。
8月中旬から肥料を撒いたり、アタッチメントを替えて耕すことなんと6回。
人参が育ちやすいふかふかした土をつくります。
(2)太陽熱消毒
9月上旬〜下旬
トラクターでうねの形を作りながら透明のビニールマルチを張っていく作業。
太陽熱で土が高温になるのを利用して、雑草や病気・害虫の発生を予防します。
土壌の消毒が仕上がっているかどうかは見た目ではわからない為、よく晴れた日で約20日、というのが目安です。
土が乾燥した状態では、温度が上がりきらずに雑草の種が生き残ってしまうことがあります。
太陽熱消毒の効果を充分に得る為には、ある程度の水分が必要な為、雨が降った後か、まんべんなく水まきしてからビニールマルチを張ります。
土壌消毒剤や除草剤を使用しない有機栽培において、このような太陽熱消毒は、よく見られる光景です。
またこの時期は台風の影響を予想しながらの作業。
風でビニールマルチが剥がされてしまうと、太陽熱消毒をもう一度しなければなりませんが、そうすると種まき時期が大幅に遅れてしまいます。
頴娃町の気候では遅くても10月上旬までには種まきを済ませなくてはなりません。
種まき時期が1日遅れると収穫は1週間遅れるそうです。
人参の品質を保つ為には適期に収穫することが重要であり、種まきの前準備がしっかり出来ているかどうかが、農家さんの収入を左右する出来事になります。
(3)種まき
9月下旬
透明のビニールマルチを張って太陽熱消毒をすること約3週間。
途中で台風の心配もありましたが、風で飛ばされることなく種まきの日を迎えました。
ビニールマルチに真ん中に切れ目を入れてから半分ずつ剥がしていきます。
こうすると土の重さが少なく、きれいに剥げるようです。
種を等間隔にまくことができるように加工したシーダーテープ(ミシンの下糸のような形)をセットし、播種機(はしゅき:種をまく機械)をコロコロと押しながら歩いて種まきをします。
播種機の前後のタイヤの間からシーダーテープが出てきて、その上から11〜12ミリの厚さで土をかぶせる仕組みになっています。
この作業を繰り返し、1つの畝(うね)に4列、種をまいていきます。
約1週間程で小さな芽がでるのだそうです。
雨が降る前に種をまくのがベストですが、雨が少なければ水をまきます。
太陽熱消毒用のビニールマルチを張っていない通路にはすでに雑草が生えてきており、これを早いうちに除草しておかないと、そこに潜んでいる虫に人参の小さな芽を食べられてしまうとの事。
涼しくなって雑草が生えなくなるまでは、まだまだ気の抜けない日が続きます。
(4)草とり
種まき後〜収穫まで 随時
種まきから約1か月後の10月下旬、10〜15センチほどの背丈に成長しました!
10〜12月の間は主に通路の除草。
管理機をかけることで通路の雑草を掘り起し、取り除きます。
1回通っただけでは雑草の根が残ってしまうため、往復します。
山脇さんの畑3枚分の通路の長さを合計すると、約3,000mなので、1回管理機をかけるだけで往復で約6,000m歩くことになります!
さらに、この作業を年に最低2回はするので、通路の除草だけで12,000m・・・
本当に大変で時間のかかる作業です。
作業中、人参の葉がしおれて倒れているところ、茎から上がなくなっているところをみつけました。
その根元を掘っていくと、ネキリムシの幼虫がいます(赤丸部分)。
その名の通り、根っこをかじる虫ですが、この被害にあうと、その箇所に人参は生えてきません。
欠株や葉がしおれている箇所の近くにはネキリムシがおり、どんどん被害が広がってしまうので、見つけ次第このように近くを掘ってひとつづつつぶしていくそうです。
山脇さんの場合、この時期はさつまいもの収穫、出荷があるため、その作業の合間を見て少しずつ人参の畑の除草をする事になります。
収穫まであと約2か月、まだまだ先は長いですが、殺虫剤や除草剤を使用しない有機栽培では、このように地道な作業が続いていきます。
(5)収穫
1月中旬〜2月
8月に土づくりを開始してから約5ヶ月。
いよいよ収獲です。
今年は温かかった影響か、葉が良く育って例年の3倍くらいの高さがあるそうです。
また、人参が既にL〜3Lサイズに育っており、S〜Mサイズはあまりない状況です。
山脇さんのところでは、手作業で収穫・調整を行います。
収獲した人参を、畑で葉を切り落としてコンテナに詰めます。
作業場で、人参を洗い機にかけます。
洗い機にかけるのは1回80kg、7分間、その間洗い機の人参が偏らないようにしたり、コンテナを洗ったりしています。
水切りをするためにコンテナに入れた人参を一晩おき、翌日に選別・箱詰め・出荷作業を行います。
一つ一つ重さをはかって、サイズ分けします。
この時に、変形や割れ、股割れ、虫食い等は規格外品に分類されます。
例年では11〜12月になると地温が下がり、人参をかじるヨトウムシが死ぬため、虫の食害は少なくなります。
しかし今年は温かく、冬を越したヨトウムシが大きく育ち、その分食べる量も増えているのか、大きくなった人参でもかじられてしまいました。
このように深い穴が開いてしまうと、青果用でも加工用でも、買って頂けるところが少ないのが現状です。
数少ない有機農家さんが今後も栽培を続けていけるように、正規品の人参はもちろんのこと、このような規格外品も販売できるようにしていくことが、今後の地球畑の課題です。
(6)さいごに
取材を快く引き受けて下さった山脇さん、本当にありがとうございます。
作業でお忙しい中、丁寧に教えて頂き、大変勉強になりました。
至らない点もたくさんあったと思いますが、今後も勉強し、有機野菜のおいしさを皆さんに知って頂けるように頑張ります。
2020年1月
|
一覧ページへ戻る
|
|